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(更新:2017年7月9日)

【時事】『週刊少年ジャンプ』巻頭カラー扉絵騒動に関しての「表現」をめぐる私感

先日から『少年ジャンプ』掲載の『ゆらぎ荘の幽奈さん』カラー扉絵があまりに性的にきわどすぎた表現だったということで賛否両論巻き起こっているが、私見では、当該の作品については良くも悪くも小中男子向けの脳天気なお色気コメディの域を出ないものでそれほど悪質な要素や意図はなかったようだが、やっぱり「いくらなんでもちょっとこれはやり過ぎ(^_^;)」とは思うし、反対派にはちょっと過剰すぎる意見や反応も多いが、それでも「表現の自由」そして「性の自由」を言いつのるあまり、少しでも拒否反応や反論を述べている人々に対してこれまた過剰に罵倒したり、なかにはそれこそ行きすぎた男性側の性欲肯定やフェミニズムな立場の女性たちへの揶揄などをこれ幸いとばかりに展開している一部の男性たちの存在には、それこそ看過しがたい怒りや反発を感じた、というところである。

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この手の騒動や批判が巻き起こるたびに『子供はそう簡単に(マンガやアニメやTVバラエティなどの)影響を受けて実行したりしない。親や教師がきちんと指導すればいい』という意見や反論が出てくるが、私の経験からひとつ言わせていただければ、総じて子供というのは、そして大人にしても案外かんたんに影響を受けるし実際に真似をするし、片や親や教師の言うことはそう簡単には聞き入れないしむしろ積極的に逆らって行動したがるものだ。加えて言えば、往々にしてそのようにフィクションの影響をもろに受けて嬉々として真似をし実行する「子供」らのもっとも格好の標的になるのが、他ならぬ「きちんとフィクションでの表現の真意を読み取った上で現実の区別をきっちり判断でき、軽率に真似などしたりせず、親の言うことや教師の指導を素直に聞き入れて従う良い子」たちなのだ。

現にこの私などは、まさに「やられ役」そして「悪役」であるところの怪人とかモヒカンのザコとか悪魔超人とかなんとかに見立てられては、毎日のように至るところでドロップキックとかボディブローとか北斗なんとか拳とかその他なにやらの必殺技で「成敗」の真似事をされる子供時代を過ごしてきたのだ。そしてこちらはマンガやアニメやTVのバラエティからの「影響」かどうかは定かではないが、たびたび面白半分に寄ってたかってスカートを脱がされそうになったり下着の中に手を突っ込まれたり、時には特殊学級の男子の前に引っ張り出されて無理やり抱きつかされたりキスの真似ごとをさせられたり等々という少女時代を経験してきた。そして、そんな私に対する親や教師の対応と言えば「だったらやり返したりもっと上手く躱したり逃げたりしなさい。他の子はみんなそうやってるでしょ。いちいち先生に告げ口されても困る。自分の力でなんとかしなさい」「あなたにも悪いところはあるんじゃないの。どうしてもっと強くなれないの?他の子みたいに要領良くできないの?」とかもっぱら苦言を返されたり、それこそ悪ガキ連中の数人や数十人すら碌にあしらえないような愚鈍でひ弱な生徒もしくは娘を抱えてしまったおのれの不運をひたすら嘆かれたりする……という状況であり、それがかつて私の体験してきた「社会」であり、身を持って思い知った「フィクションによる影響」であった。

 

しかし、そんなこんなで長じた現在には箸にも棒にもかからない一介の腐女子に成り下がってしまった私としては、やはりマンガやアニメなどを含めた創作物への過剰な規制には賛同しかねるものがある。結局、年代世代性別そして生育環境に拘わらず人間には抑えきれない本能や捨てきれない欲望、煩悩があり、しかしそれには表現や創作への欲求も当然含まれるのだ。それらはいかなる良識や理性をもって管理しようとしても決して完全には制御したり抑えきれるものではない。そして、そうした欲望や情念の込められた表現や創作物というのはそれが良きにつけ悪しきにつけ、触れた者や世界に対して影響を与えずにはおかないもので、むしろ方向はどうあれそうした影響を与えうる表現でなければむしろ手間を掛けて創り出す意味がないといえるだろう。もっとも、だからこそ、何らかの抑えがたい欲求を抱き、それを心ある他者そして世間に対しても顕したいと望むなら、同時にそれに対する批判や反発そして非難や抗議なども認めて受け入れなければならない、と思うし、以前に当ブログの記事でもいくつか同様なことを書いたことがある。

【エッセイ】「表現」も「自由」も、やはり諸刃の剣

【私事・私感】怒りもまた表現の自由。—東村アキコ『ヒモザイル』休載に関して—

【エッセイ】「子供」向けの作品は「大人」しか創ってはいけない

それを踏まえたうえでも、なお自分の表現したい欲望や思想、世界があるというなら、それこそ世間の良識に逆らい数多の良識ある人々の抗議非難罵倒を受け、果てには公権力による制裁や処罰をこうむることになったとしても、甘んじて受け入れるかそれとも、これまでの実績や地位を失い親類縁者にそっぽを向かれ路頭に迷ってもやむなし、くらいの覚悟で立ち向かうべきだと思う(その点においては例えばろくでなし子は尊敬できる)。さらに言えば芥川龍之介の名作『地獄変』での絵師・良秀のように、世間の貴賎老若みなから忌み嫌われ蔑まれ、みずからも周囲の人間を侮り利用し傷つけ、果てには最愛の娘を目の前で焼き殺されても尚おのれの執念を貫き全うして果てるくらいの心づもりで取り組んでいくべきで、でなければ、それこそ世間の良識や理性による抑圧や権力や権威による規制に耐え、後々まで残って世間の人々の心を良きにつけ悪しきにつけ動かし影響を与えていくような「作品」は創り上げることができないのだ。半端に世間の誰にでも、ましてや権力や権威の側に許されたいとか大目に見て貰いたいとか、まして認められたいとか褒められたいとか、注目されたいなどとは考えないほうがいい。

痴漢騒動の「ブラックボックス展」から考える”お騒がせアート”多発の背景とは? 痴漢騒動の「ブラックボックス展」から考える"お騒がせアート"多発の背景とは?

過去に合同ゼミで、ある美術系大学の学生が、「ピンポンダッシュをして、出てきた家の人が誰もいなくて怪訝そうな顔をする」という映像を隠し撮りして発表しました。僕は「芸術だから何でも許されるの?どういう発想なの?見ず知らずの人の日常をあなたの作品のために乱され、利用されるのはどう正当化できるの?」っていうコメントをしたのですが、彼の指導教員は「全ての芸術表現は何かしら人を傷付けるものである」といって擁護したんですね。

実は、このレトリックを芸術の世界では少なくない人が使います。これも言葉の上では正しいんですよ。しかし現実の世界でそれがそのまま通るはずはない。

要は、自分の言いたいこと描きたいもの生み出したい世界には、この現実に生きる誰かの誤解や反発を招き傷つけ、その立場を損ない心や尊厳を傷つけることになったとしても、それでも表現し世に問うだけの価値や意味はあるのか?ということだ。それこそ例えば「やっぱりエロが描きたい!可愛くてエロい女の子(or美少年)がパンチラしちゃったり裸にひん剥かれちゃったりして困って恥ずかしがってるシチュエーションが見たい!清楚で色っぽい女子(or美青年)がセクハラされたり痴漢されたり、拉致監禁されてレイプされたりしてボロボロで泣き叫び絶望するか、逆にそれでも喜んじゃったりする話が描きたい!」……とかいうことであれば、その結果「影響」を下手に受けた輩によって不快や痛手や犠牲をこうむった人々による怨嗟を招き、そしてもちろん良識ある人々や公権力の顰蹙を買って、まさにマンガやアニメやゲームにあまた存在し続ける怪人やモヒカンのザコ達のごとく容赦なく完膚なきまでに叩き潰されるどころか、おのれの肉親や我が子たちまでがその「影響」によって傷つけられ人生までも狂わせられるような結果になっても悔いは無い……ということであれば、どうぞ、いくらでも好きに描いて構わないし本来の「表現の自由」とはそういうものだろう。それが嫌なら、やはり実社会ではある程度の規制や抑圧は甘んじて受け入れて、でなければいさぎよく地下に潜り闇に隠れて決して世間には出さないことだ。

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蛇のごとく粘着だが、羊のごとく惰弱。

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