2月 112018
 
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何を載せてもいいと言われたのに…不登校の妹が卒業文集に「学校に通えない理由」を書いたら先生に却下された話

この私に言わせれば、この作文、どこを取っても却下される要素しか見出すことができないのである。まず、小学校六年生(相当)の年齢の、それも不登校の児童の作文としてはそれ自体が非常に素晴らしい完成度であるからだ。自分の現状をきっちり把握したうえで、それに至る経緯も含めて過不足なく平易にそしてきっちり論理立てて述べ、その上で今後の展望を単なるありきたりな希望や夢想、強引な結論やお題目ではなく真摯に、読者も得心し自然に応援したくなるような形で述べている。同じ年頃の子供はおろか並みの大人でもこれほどのものはなかなか書けないだろうと思える。もちろん盗作や加筆修正の跡などは感じられず、語彙も知識も感性も充分に小学生の持てる範囲内で構成されたものである。しかし、そういう状況においてこれだけの作文を仕上げらる程のスキルを身に付けられてしまうとなれば、曲がりなりにも少なくない時間を学校での国語の授業に割いてきた「普通」の子供たちと、なにより教師たちの立場がなくなってしまうのである。

つぎに、関連のコメントでも多く指摘されているように「冷たい言葉や、態度」という「いじめ」が不登校の原因と匂わせる記述があったことだろう。この作文ではその冷たい言葉や態度を投げつけた相手を名指しで非難しているわけではなく、その事実に関して恨みや憎しみを書き連ねるどころか「自分にも、悪いところがあった」とまで述べているのだが、未だに教育界では「いじめ」の事実そのものを瑕瑾とみなし、しかも専らその元凶と責任を被害生徒の側のみに負わせてその訴えと存在そのものを黙殺して済ませるような「解決」方法がまかり通っているようで、この作者の少女が所属していた小学校も例外ではなかったのだ。

そして、これがおそらく最大の原因と思われるが、この作文には不登校に追い込まれ『はばたく教室』という「適応指導教室」での体験や交流、それによって得られた喜びと自己肯定感そして成長を端的にきわめて効果的に説得力をもって語っている一方で、この作文を卒業文集に載せるはずの教師と小学校に対する思い出や未練、後ろめたさなどを一片も言及していないからである。彼女はたとえまったく心にも無く事実にも背くことであったとしても、ここは当の教師の「何載せてもいいよ」とかいう言外の意図を察知し忖度して「学校へ行って先生やクラスのみんなと一緒に勉強したり行事に参加したりできなかったことが辛かったし哀しかったし、とても残念です」というような意味合いの一文を挿入しておくべきだったのである。まして、「頑張って挑戦して、失敗しても、また別の方法を探す事」などと書いてはいけなかったのだ。その「別の方法」には少なくとも教師の授業ぶり含めた行動やクラスメートの対応といったものがおよそ含まれていないことは語らずとも明白だからだ。そのような要領と狡猾さの欠如、この作文からも滲み出ているあまりにも素直で真摯な気質こそがまさに彼女の不登校の原因でもあるだろう。

以上をもって、この作文そしてこのような作文を書き得た彼女の存在そのものこそが、当の教師とその属する学校そしてその学校教育の体質、構造含めた現状、そしてそんな現状を未だ変えるどころが放置して助長している社会に対するもっとも強烈な批判であり否定であり、恐るべき脅威なのである。したがって、もはや件の教師のごとき「大人」の側にいる人間に成り下がってしまった私のごとき輩には、この作文が持つ社会や少なくない「大人」にとっての「危険性」というものを嫌というほどに理解できてしまうのだ。とは言え、件の彼女には以上のごとき事態や、ましてこの私のような下らぬ大人の作文もどきにはなんら関わることなく、そのままにこの作文で表明しているとおりの自分の意志と考えでもって、これからの永い未来を生きて進んでいけば良いとおもう。卒業それも小学校のそれというのは長い人生のうちのありふれたイベントの一つに過ぎず、ただ「普通」に生まれて過ごせたというだけの凡俗どもでも経験できる程度のものであるが、彼女の得た経験と真の意味での絆と交流、そしてなによりそれらで磨かれた以上のごとき資質というものはおよそ何ものにも代え難く得がたいもので、ゆくゆくはこの社会にとっても世界の未来にとっても有用なものであると断言できるからである。

 

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