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(更新:2016年8月11日)

【時事】この同級生と大学は(法的には)責められないと思う —「同性愛暴露」による一橋大提訴の件について—

「ゲイだ」とばらされ苦悩の末の死 学生遺族が一橋大と同級生を提訴 「ゲイだ」とばらされ苦悩の末の死 学生遺族が一橋大と同級生を提訴

この記事のコメントではZくんや大学側がやたら外道のごとく責められているが、自分にはいくらなんでもそこまで彼らが責められることをしたとは思えないし、ここまで非難されるのは
むしろ酷だと思う。

あえてZくんの側に立って考えてみれば、この話はむしろ「友人の一人から突然一方的な感情を暴露されたあげく、その当人にすら背負い切れないほどの重い秘密を無理やり押し付けられた」という事態。言わばいきなりやたら重くて壊れやすく貴重な宝物を一方の恣意的な都合で押し付けておいて、それを他の誰にも言わず頼らず一生手前だけの責任と努力と我慢だけで持ち続けて守り続けろ、という、一個人に無償で頼むにはリスクが大きすぎる、はっきり言えばいささか虫の良すぎる要求だと感じる。

「個人の秘密を守れない人間に(法律家としての)守秘義務が守れるはずがない」という意見もあるが、「守秘義務」というのはそれに関わる業務上の報酬の中に含まれているわけで、当然金銭を含めた相応の見返りがあってのうえで初めて生じるものだ。あくまで個々の私人どうし、それも学生どうしの友人関係や恋愛関係においての感情のやりとりで強要されるようなものではない。少なくとも法的な義務や拘束力は無い。「秘密」というものは、それが本当に秘密ならばひたすら自分ひとりで墓まで持っていくか、それこそ互いに一生を誓い合うほどの絆を確信できる相手か、かけがえのない肉親相手にのみ打ち明けるようなもので、まして、そもそも自分を理解してくれているかどうかも定かではないような相手を安易に勝手に「共犯」にしてはならないと思う。それこそ相手に対して無礼ですらあると思う。

実際のところ、同性愛ということを抜きにすれば相手に一方的に過剰な幻想や期待を膨らませてしまった挙げ句、いざ体当たりしてみたら実像、現実とのギャップを目の当たりにして打ちひしがれたという、恋愛初心者の頃ならばいくらでも体験する事例、そして洗礼である。そもそも、相手を碌に見極めないうちから自分の大事な感情、まして自分の一生の秘密に関わることなどを容易く知らせるべきではないし、告白するならばもしも相手に受け入れられて交際が叶えばいずれ周囲には隠し通せなくなるわけで、どちらにしろ周知されることは承知の上の覚悟でやらねばならぬものだろう。同性愛などのカミングアウトにしても然りである。

カムアウトすれば自由になれる、という妄想 カムアウトすれば自由になれる、という妄想

カムアウトって誰のためにするの?
自分が楽になりたいだけだよね?
自分が楽になれば、それを聞かされた人が思い悩んでもいいの?
そんな自分勝手な理屈がいつの間にか「正しい行為」として推奨され、
あまつさえ「受け入れられる社会が理想」とか
その覚悟もないし出来もしない連中が綺麗事で書くから現実との齟齬が生まれる。

大学側の対応にしても、確かに同性愛(者)に対する知識や配慮の乏しさは教育機関としてみれば心許なく思うが、Aくんのショックの主因というのは結局はZくんの「裏切り」に対するものだったのだろうし、言わばAくんのあくまで私的な苦悩でありトラウマなわけで、それこそカウンセリングや休養を勧める以上の対応はできないし、またしてもいけないものだろう。私見では、Aくんの中では「Zくんに拒絶され裏切られた」という私的な(恋愛)感情からくるショックそして絶望と同性愛に対する自身のコンプレックス、社会からの偏見に対する憤りとがおのれの内面で混沌としたまま収拾がつけられず、肥大化してしまったのではないだろうか。そして、それを冷静に指摘した上でフォローしてあげられる第三者がいなかったのが不幸だったのだ。

Aくんを自殺まで追い詰めたものは「同性愛」がいまだ厳然と社会的、性的な重篤なハンディであり、その人の一生を狂わせてしまうほどの重大な「秘密」にならざるを得ない状況、究極にはやはり「同性愛者への差別・偏見がある社会」なのだが、その責をZくんという一個人それも一学生と一教育機関の一部署の過失のみに求めるのは正直無理筋だと思うのだが。

結局、自分の一生に関わるような「秘密」はたとえ親しい友人にも、むしろ大事な友人だからこそ打ち明けてはいけない、そんな要らぬ負担や重圧をかけて悩ませ苦しめてはいけない、そして、あくまで個人どうしの交際や交流のうえでのモラルやデリカシーというレベルの問題に法的な介入を求めペナルティを加えるという前例を作ってしまうのはどうか、ということで、この件に限っては同性愛差別うんぬんはまた別の問題だと私は考える。

蛇のごとく粘着だが、羊のごとく惰弱。

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