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(更新:2023年9月9日)

【エッセイ】不可解な憤慨 —女性専用車両へのバッシングについて—

松本人志が女性専用車両に「ブスばっかり」 共演者らが唖然 – ライブドアニュース松本人志が女性専用車両に「ブスばっかり」 共演者らが唖然 - ライブドアニュースこのエントリーをはてなブックマークに追加

スタジオで出演者が議論する中、話題は「チカン抑止シール」の賛否から、それ以外の痴漢抑止方法へ。

ここで土田晃之が、女性専用車両を増やしてみてはどうかと提案したところ、松本が「すんごいブスがいっぱい乗ってるでしょ、女性専用車両」と、利用客の容姿を批判した。

(中略)

松本は、容姿を批判した理由について「(男性客が)かわいそうやねん」と明かした。松本は「女性車両で優雅に乗っててさ、横(の車両)で汚いおっさん同士ぎゅうぎゅうになって」「タニシみたいになって」と明かし、男性客の苦境を訴えた。

私は実際に当の番組を視聴してたわけではないし、単にギャグがスベったというだけの話なのかもしれないが、それでも、このような発言をした当のご本人がまぎれもなく一女の父親であるという事実も鑑みると、そう笑って流してばかりはいられないように思うのである。そもそも私的には、大方の場合において「まったく本気じゃない『ネタ』というのはまず有り得ない、むしろ当人にとっての本気ほど『ネタ』で言いたがるもの」、ましてそれが芸人ならなおさら……と信じているからだ。

(´-`).。oO(本来、こういうコントを創っちゃうような女性観の持ち主が結婚しちゃいけなかったんだよな……しかも、「娘」の父親だなんて……)

この「女性専用車両」が導入され始めた当初、私は「ああ、確かに現状ならまずはこれがベターな対策だろうな。ちょっと車両への移動が面倒くさいけど、それぐらいの負担はお互いの安全のためなら、止むを得ないよね」と思い、それ以上は深く考えることもなかった。これでまずは痴漢被害を恐れ、または実際に被害を経験してトラウマになっていたりする女性(むろん大半の女性がこれに当てはまる)は安心して通勤・通学ができるし、もちろん男性のほうも慌ただしいラッシュ時に痴漢騒動に巻き込まれて要らん疑いを掛けられたり、余計な手間や時間を取られて不愉快な思いをする機会を避けることができる。鉄道職員のほうも乗客の管理がしやすくなりそうだし、そして、当の痴漢(予備軍)にはこの専用車両という存在そのものが抑止力になり得るだろう……というわけで、各方面にとって事態が改善しこそすれ、不満が起こるなどとはおよそ想像だにしなかったのだ。

ところが、いざこの制度が各鉄道で普及し定着するにつれ、どういうわけか「男性差別だ!女性優遇だ!」とか反発を露わにする男性の声が主にネット上で目立つようになり、以下の記事で紹介されているような揶揄的な画像が流布したり、ちょうど去年の今ごろにはTwitter上で「理想の女性専用車両」と称して装甲車や戦闘機、あまつさえ貨物車や家畜車、果てには霊柩車などの画像を次々に挙げたりして女性専用車両を支持する女性たちの神経を逆なでしようとする、という騒動が起こったりしたわけだ。

ネットで有名な「女性専用車両インタビューの女の子」の正体が判明 → 現在はタレントに! – ねとらぼネットで有名な「女性専用車両インタビューの女の子」の正体が判明 → 現在はタレントに! - ねとらぼこのエントリーをはてなブックマークに追加

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1304/05/news109.html

【徹底討論】理想の女性専用車【アホみたい】 – Togetterまとめ【徹底討論】理想の女性専用車【アホみたい】 - Togetterまとめこのエントリーをはてなブックマークに追加

http://togetter.com/li/674314

以上の件なども含めて、私はつい最近までこうした(一部の)男性側からの「女性専用車両」に対する反感、バッシングというものに対しては、憤りというよりもただただ不可解、として言いようがなかった。彼らにとっては銭湯や公衆トイレの男女の区分けは実は「差別」なのだろうか? 自分たちもむしろ痴漢冤罪のリスクが減って喜ばしい、となぜ思えないんだろう? いったい、この制度というか措置のなにが彼らをこれほどまでに追いつめ、脅かし、苦しめ、怒らせているのだろうか?……と本気で疑問だったのだ。

松本人志が述べたように「(運賃は同じなのに)女性が専用車両で『優雅に』乗っている横で、男性の方はすし詰めに乗らされてタニシみたいになってるんだ!」というなら、それは単にその時間帯の女性乗客の比率に対して車両数が多すぎるということなのだろうから、専用車両の数を減らせばよい。「(運賃は同じなのに)女性にだけ『専用』の車両があるのは不公平!」というなら、新たに「男性専用車両」を設けるか、女性車両利用者に別途料金を課すなどのシステムを考えればよいだろう。「女性専用車両を作っても痴漢犯罪がなくなるわけではない」ということなら、車両ごとに監視カメラを設置する、などの代案を出せばよいし、いずれもまずは鉄道会社に訴えるべきことを、一介の利用客に過ぎない女性側にばかりぶつけてどうなるというのだ。

現実問題として、痴漢犯罪者、というかそもそも虞犯者というのはそれこそ外見だけでは判別できないのだから、防犯のためにはその犯行の対象になりうるものを集めたうえで隔離しておく、というのが最も確実で効率的な措置なのだ。いわば当座の貯金を箪笥の引き出しにまとめて入れて隠しておく、という程度の話に、「女性ばかり特別扱いするな!」とか、「男をみな痴漢(予備軍)呼ばわりするのか!」とか騒ぎ立てる手合いの気持ちがどうにも理解に苦しむ。じつは男の方がよっぽどヒステリックで被害妄想の強い生き物なんじゃあないか、という感想を持たざるを得なくなるのだ。「痴漢ぐらいされたって別に減るもんないだろ、でも、痴漢の濡れ衣なんか着せられたら人生台無しになるんだぞ!」とかいう意見もよく見かけるが、それならばなおのこと、そんな不届きな、狡猾で邪悪な、あるいは被害妄想に取り憑かれた電波な女が紛れ込んでいるかもしれない集団を隔離してくれる女性専用車両はありがたい存在ではないのだろうか?

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「女性専用車両なんて女の甘え。痴漢に遭っても女性が抵抗する勇気を持てばいいだけ」という意見も(一部の女性からも)よくあるが、痴漢含めて性犯罪というのはただでさえ証明が難しいし、通勤・通学のラッシュ時という慌ただしく殺伐とした状況で、そして相手はやはり自分よりも腕力があるであろう男性。相手を特定し抵抗し声を上げるにも、しらを切られるどころかさらに犯行がエスカレートするか逆ギレされるか、それでも周囲は助けてくれるどころか「俺はやっていない」「余計な騒ぎに巻き込まれたくない」とばかりに我関せずと無視する場合がほとんどで、あまつさえ「気のせいじゃないの?」「そんなことぐらいで騒ぐなよ」「濡れ衣を着せて金を取ろうとしてんのか? まったく最近の女は……」というような、むしろこちらの側が悪事やトラブルを起こしたような扱いを受ける可能性も大きいわけだ。そういう状況において、それでもただひとり勇気を持って立ち向かえる女性、それも最もターゲットにされやすい年頃のうら若い女性というのは、実際にどれほどいるだろうか?

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以上のように考えれば、やはり女性専用車両というのが現状で取りうる最もベターな選択であり、男女双方にとって平和的な選択なのだ。少なくとも「痴漢されないようなブスやババアばかりが騒いでる」とか、それこそ平然と「ネタ」で口走ってしまうような輩がこの世間に溢れているうちは(それって、内心では美女や若い女だったらあわよくば痴漢してみたい……って漏らしているようなものじゃないか!)。たとえ、いくら「自意識過剰で身のほど知らずのブスやババア」「権利ばかり要求するフェミニスト」などといった仮想敵をでっち上げて叩いたり揶揄したところで、ラッシュ地獄も含めて己の(「男性」としての)立場が少しも改善されるというわけでもなく、それで結局いちばん得をしてしまうのが他ならぬ現実の痴漢犯罪者なのであり、そして現実に痴漢の被害に遭って傷つき苦しむ女性たちは増え続け、加えて現実に痴漢冤罪を負わされた男性たちの苦悩や救済はなおざりにされるだけ……なのだから。そして、そういう状況には、たとえ(幸いにして)痴漢のターゲット外であるようなブスやババアであったとしても、同じ「人間」の一員として、少なからず思いを至らせ、心を痛めたりするものなのである。

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