先週の土曜日、地元にて高名なタブラ奏者のユザーン氏とシタール奏者の武藤景介氏のLIVEに行った。場所は駅近く、裏通りの地下のバー。この地に住み始めて数年経つが、今まで殆ど足の向かなかった辺りで、そして全く知らなかった店である。キャヴァーンを発見したブライアン・エプスタインの様な感覚で店内に入った。
演者側のスタッフとおぼしき人の誘導で店内に入ると、薄暗いペンダントライトとスタンドテーブル上のキャンドルで照らされていて、60半ば位のマスターがスタンドの向こう側に居り、備え付けのテレビでBSが放映されていた。ライブ会場の隣室は、厨房を改造したらしく、キッチンをそのままスタンドにした横の十畳ほどの空間がフローリングになって座布団が敷かれており、一段高くなった舞台にタブラが置かれていた(実物は初めて見たかな…)。
私は予約をしていなかったので、入口近くのスタンドの傍に立っていたのだが、たまたま席が空いているとのことでスタッフが座敷席に招き入れてくれた。ありがたい。程なく主役の奏者お二人が入ってきた。ユザーン氏はクロックスを履いていたが、それぞれ、タブラとシタールの精が30代の日本人男性に化けたらまさにこうなるだろうというルックスである。
武藤氏がシタールを抱え込んでバンドエイドを指に巻き、ユザーン氏がハンマーを持ち出してチューニングを始めたと思ったらいつの間に演奏が始まっていた。タブラはその大きさ以上に迫力のある音が出る。シタールは間近で観るとかなり大きくて、ギターよりも弦の数が多く、張り方も複雑で精緻である。武藤氏は長い指でかなり巧みに弦を弾いたり撓ませたりして奏でていたのだが、実はシタールの弦はとりわけ硬くて弾くのは見た目より大変だそうだ。その場の観客の一人の男性は「アレは凄い。ギターでもああいう風には弾けない。片手に指が10本有るんじゃないかと思ったよ」…と後で語っていた。
とにかく生で聴くシタールの音色は、あたかも芳醇なウイスキーをイメージさせるような感覚で、タブラは心臓の鼓動のようであった。リズムが佳境に入るにつれて、ユザーン&武藤のお二人が時々アイキャッチして無茶苦茶嬉しそうに笑うので、ああ、インドバンドでも感覚は(ロックやジャズなどど)一緒なんだなあ……と妙に感心した。
無事、終演の後で武藤氏のCDを購入してサインを頂いた時、武藤氏が「いや、あまり僕の演奏を熱心に観てくれてるんで(^^)、何か楽器をやっている方なのかと思いましたよ」とか言われたので、正直かなり気恥ずかしかった(^_^;)。その後、
私「日本でインド音楽で、プロで活動している方はどのくらいいるんですか?」
武藤氏「20人ぐらいですね。……ラヴィ・シャンカールの活動でシタールが世界的に注目されるようになったんですけど、本来は、タブラもそうだけど伴奏楽器なんですよ。インドでは歌も一緒なのが殆どです」
私「歌って言うと、マントラみたいなやつですか?」
武藤氏「いや、民謡みたいな感じで、ちゃんとストーリーや意味はあります。ただ、日本人にはそんな風に聞こえるかもしれませんね。唄の扱いが独特なんです。歌声も音素というか、音律を構成する一部として、それを意識した歌い方をするんですよ」
私「ああ、ボーカルも楽器の一つ、みたいに溶け込ませて……みたいな」
武藤氏「そんな感じです」
そして、話題が先日のポール・マッカートニーのコンサート(中止)の件になった流れで私が「実は、ビートルズじゃジョージが好きなんです(*´ω`*)」と言うと「おお、それはもう、全然有りです、OKですよ!(^^)」「やはりジョージですから、彼のお陰でインド音楽がこうして世界的に有名になったわけですし!」……これが一番の感激の言葉だったり(当然と言えば当然なのだが)。
というわけで、思いがけなく充実したサタデーナイトを過ごしました。これからも頑張ってどんどんインド(系)サウンドを聴こう!
ちなみに、ユザーン氏&武藤氏の演奏の様子(今回のではありませんが)
U-zhaan Official Website http://u-zhaan.com/(アルバムの購入や視聴ができます!)
++シタール奏者 武藤景介++ http://home.k06.itscom.net/kkmuto/