ホーム » エッセイ » 時事 » 【時事】TOKIOベーシストの例の事件について
(更新:2023年9月9日)

【時事】TOKIOベーシストの例の事件について

TOKIO山口達也、涙の謝罪会見の全文掲載「酩酊泥酔になってしまった…」【前編】
山口達也 慟哭の謝罪会見 全文掲載「TOKIOでありたいと感じています」【後編】

先週末いらい、超人気国民的アイドルバンドのベーシストが起こしてしまった未成年に対する猥褻事件については、すでにメンバーや先輩後輩も含めてきちんとした批判は出ているし色々言い尽くされているが、目下の私の感想としては以下の意見がすべて代弁してくれている。

松本人志「アホか。何がハニトラだ」 山口達也の行動に疑問「高校生に電話聞く?」

何度も共演経験があるお笑いコンビ「スピードワゴン」の小沢一敬(44)は「山口さんは仕事の現場で会うと、優しいし、あったかいし、頼りになる先輩。こういうことがありましたけど、それでも山口さんのことを好きです。だから、ファンです」と言葉を選びつつコメント。ただ、今回の騒動で許せなかったこともあるとし、女性を誰だと割り出そうとするネットの人たちとか、家に行った女子が悪いって言っている人たち、それは好きじゃないとした。

松本は「高校生になんで電話聞くのか。連絡先を聞いた時は少なくとも酔ってなかったんだから」と山口の行動に首をひねり、「やっぱりおかしい。50手前のおっさんが気の合う高校生おるけ?」とバッサリ。それに関連し、一部で少女側のハニートラップでは?との声がインターネットなどで出ていることにはアホか。未成年を自分で呼んでおいて、無理やりキスしておいて、何がハニトラだ!お前が仕掛けたワナだろと怒りをにじませた。

長らく幅広い世代の好感度と支持を受けてきた国民的アイドルタレントがもっとも卑劣な暴力行為をしでかして、それに対してもっとも真っ当な正論で非難しおおせているのがお笑い芸人という事態、完全に世も末といったところだ。もっとも当の松本人志とその周辺も若い頃の素行や言動を振り返ったかぎりでは決して偉そうなことを言える立場ではないような気もするが、やはり娘を持つ父親としての心境の変化が大なのだろう。片や今回しでかした当人も歴とした二児の父であり、この子供たちの父親への感情や今後の関係も踏まえて考えるとますます気が重くなるし、つくづく思慮がなさすぎたし取り返しのつかないことをしてくれた、としか言いようがなく、しかしその辺りを踏まえて彼の息子たちへの配慮したうえでのコメントを出してくれた城島リーダーはやはり名実ともに「リーダー」でありジャニーズの長老と呼ばれるだけのことはあるのだ。

TOKIO城島、国分、松岡、長瀬の4人も謝罪コメント発表 山口達也が無期限謹慎【全文掲載】

城島茂、山口達也のTOKIO復帰について「ありえない」

それにしても、この手の犯罪事件が起こるたびに被害女性の方をやれ「夜中に男の部屋に呼び出されてノコノコ出かけて行く方も悪い」「娘の無断外出を咎めない親の教育の悪さを棚に上げて相手を責めるな、まして警察に訴えて加害者の人生を台無しにするなんて」とか、ましてハニートラップ云々とか言い出す輩がお決まりのように湧いてくるのには、もういちいち怒って反論する気も起こらないほどうんざりだ。もちろんながら、そんな愚劣下劣極まりないまっとうな成人以前に人間としての想像力も見識もプライドも自我も欠落しきった意見とやらに対しては、当然ながらすでにきちんとした成人そして人間である方々によるまっとうな反論や批判がきっちり出ているので、したがってなおさら私などがいちいち述べるまでもないだろう(だいたいハニートラップだったらそもそも表沙汰になってしまった時点で意味が無いし、警察に訴えたりするはずがない)。

しかし、この事件において当の本人には大した悪意や狡猾さが無かったことも確かだと思う。それこそ件の被害女子と同じような年頃から、芸能界それも男性アイドルという極めて特殊な業界で人格形成における重大な時期を必死で過ごし成長してきた人に対して、一般の成人男性と同じような常識や倫理観を前提として責めるのはやはり酷だろう。芸能界それもアイドルという業種そして存在は、あまねく世間一般の人々、男女が抱いている願望や欲望を投影して体現することで成り立っているもので、したがってその世界はそれを成立させている世間の側の意識や幻想をより過剰な形で追認し投影し体現する(大手広告会社などの体質にも同様のことがいえるだろう)。したがって、そんな業界のど真ん中そして頂点に近いところで人生の大半を生きてきた男性のパーソナリティーそしてアイデンティティがどうなるか、それはやはりそんな世界そして彼を支持してきたわれわれ社会の側の価値観そして意識をより過剰に追認し体現したものになり得るのだ。

つまり、件の当人がこの事件において、そしてごく最近まで、下手をしたらあの会見直後にまで暗に支配されてきた観念というのは、とりわけ男は少しぐらいおのが伴侶や家庭をないがしろにしてでも「ヤンチャ」で多少は女や酒を嗜んで、むしろ多く接して味わっておけばおくほど(性的)魅力は増す。とくに男は年を取ればとるほどその経験は多くなりうるし、加えて経済力もあり元々ルックスも良いとなればなおのこと。むしろ、そういう女や酒などを含む遊びが碌にできない、してこなかった人間は男として大人として未熟でつまらない、きわめて価値の低い存在だ……というものだ(ついでにこの類の観念は『おそ松さん』の六つ子たちをも支配し抑圧する元になっている)。そして、この件の被害者そしてあまねく世間一般の女子をより強烈に支配する観念というのは、女は常に男にとって(性的)魅力を体現し無償で提供しうる存在であれ、ただしその魅力を(無意識にでも)みずから行使するのはむしろ害悪であり、そのことで被る損や危害というのはもっぱら女側の自己責任であり、しかしこれらに対して無頓着だったり不器用だったりするのはまさに女としての未熟さでありもっぱら女の側が責められるべきものだ……というもので、さらに端的に言えば、世間一般の女は物心つくかつかないかのときからみずからの(性的)魅力に対して「無垢」であることと熟知、熟達していることの極めて高度な使い分けと両立を暗に要求され続け、それらがもたらすダブルバインドに終生振り回されることになる。

したがって、この事件およびそれにまつわる反応というのは、この当事者たちをはじめ、以上の観念に対する無自覚な過剰適応の結果として最悪の、しかし当然の帰結といえるものだ。件の被害者に対する想像をたくましくすれば、確かに自分を呼び出した当の相手に対する異性としての憧れや好奇心が皆無だったとは言えないだろう(なんせ何と言ってもあの山口達也だし)。ましておなじ「職場」の大先輩ともなればそれなりに互いに人柄も知りあい信頼もある(と思い込んでいる)。しかし、だからこそ、その憧れと尊敬の対象である人生の先輩であり立派な大人(ゆえに「男」としても魅力的な)であるべき存在が、自制を失い生身の「男」としての欲望を剥き出しにして暴力的に向かってくる姿に恐怖を覚え、しかし辛うじて逃げおおせてより酷い事態は避けられたわけで、まさに彼女はほんらい「成熟した」女性に求められているはずの自己責任において「相手(男)の要望に応えつつもいざとなれば相応のリスクを負いつつも自分の身(貞操)を守る」というスキルを発揮している。この点においてむしろ褒められこそすれ非難されるいわれはまったくないのだが、彼女を呼び出した当人と彼を象徴する男性側の論理に拠れば、当の彼女には未成年それも「女子高生」という年代に求められる「無垢」さ未熟さと性的魅力のみが求められていて、それが拒否された上告発されたとなるとその「成熟した女」としての行動を「狡猾」さと見做して槍玉にあげられるのだ。

しかし、この事件で加害者となってしまった彼が、芸能界という社会においても一般人に対しても一貫して明るく気さくで親切な好男子であったこと、そしてTOKIOというグループそしてジャニーズというコミュニティにおいては、つねに面倒見が良く優しく頼りがいのある兄貴分であり先輩あるいは後輩であったというそれぞれの証言は決してリップサービスに終わるものではなく、確信してよい事実だと思う。しかしそれらと同時につねにその影で囁かれてきた酒癖や女性関係などが、それらの(アイドルとしての)美点や魅力において許されてきた、というより両立してしまったことが彼にとっての今回の悲劇であり、彼をとりまく世界の病理なのだ。彼はその四十数年の人生そして三十年近い芸能人それもアイドルというキャリアにおいて常に一貫して「男」として最高に理想的に魅力的であることを目指し、むしろそれを唯一にして最大の義務として(何せ「アイドル」だし)最大限の努力を続けてきた。そして、彼そして彼の属する世界に求められる理想の「男」の規範というのは、対女性のあり方も含めて、以上に述べたような観念を前提として厳然としてあるものだ。そんな状況において、彼はまさに周囲そして世間一般の期待通りの人一倍優しく頼もしい、そして素直で真面目で器用な性質であったからこそ、その「男」としての規範に人一倍愚直であり、対応できるだけの資質と能力を人一倍備えていたからこそ過剰適応してしまったのだ。

そして、その彼の「男」としての生き様、過剰適応を助長してしまったのはやはり、他ならぬ彼とメンバーそして先輩後輩を当然含んで成立している芸能界であり、その世界を持て囃し支持しているわれわれ視聴者とりわけファンにもその責任は大いにあるのだ。したがって、そういう芸能界そして彼らのようなアイドルに憧れ支持し、あるいはその世界を陰に陽に支えてきた世間の構成員である我々が目下彼に対して採るべき対応としては、あまり想像したくない事態ではあるが、おそらくかなりの高確率でメンバーがもっとも忌避ししかし断腸の思いで選択するであろう、彼のグループの脱退あるいは退社、それに伴うTOKIOというグループの解散という回答をもこれまた断腸の思いで受容しなければならない、ということだ。しかしそれこそが、彼そして彼と三十年近く苦楽を共にしてきたメンバー達に対する最大の誠実であり、彼そしてTOKIOというグループへの四半世紀に渡るわれわれ視聴者そしてファンへの貢献に対して最大に応え報いる、唯一最大の手段であろう。

 

しかし、SMAP失き今、TOKIOこそがもはや名実ともにジャニーズのトップであるのみならず国民的アイドルグループにして唯一無二のアイドルバンドとしての地位を不動のものにし、もちろん福島そして農業文化そして海洋生物学などへの多大な貢献は言わずもがな、加えて(少年隊に次ぐ長さの)25周年を迎え記念ライブツアーはもちろんのこと、さらにはオリンピックのスペシャルアンバサダーなども努める以上は開会式もしくは閉会式などでの勇姿も拝めるかもしれない……といった夢想が、よりにもよって最悪の形で潰えてしまった……昨年の今ごろには愛猫も亡くなるし、世の無常そして無情を痛感させられる近年である……。

蛇のごとく粘着だが、羊のごとく惰弱。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


BOOK☆WALKER 半額還元
ebookjapan 初回ログインで70%OFFクーポンプレゼント
honto キャンペーン情報
楽天24時間限定タイムセール 毎朝10時更新!
Yahoo!ショッピング PayPayポイントが貯まる

最近のお気に入り

※詳細はタイトルをクリック⇒
表紙画像をクリックしてAmazon

  1. ハイパーインフレーション経済史、民族差別、技術・文化史・ショタ性癖etc.を最高のエンタメに昇華。あらゆる面でのエキセントリック度は「ゴールデンカムイ」と双璧
  2. 天幕のジャードゥーガル初期手塚風の絵柄とのギャップが鮮烈な硬派で壮大な歴史劇そして正当にフェミニズムと「学究」の意義を扱った作品
  3. 豚の復讐過激イジメ復讐殺戮劇×異世界転生の異色コラボ、その実は王道の勧善懲悪&主人公の成長冒険譚
  4. ジャンケットバンク悪徳銀行を舞台に、無職ロリババア青年による裏ギャンブラーイケメンの顔面&尊厳破壊と、ヒロイン獅子神さんの成長と副主人公?御手洗君の人格破綻ぶりを堪能する話
  5. オリエントどうしても鬼滅の刃を連想してしまうが、世界観や設定のオリジナリティーとスケール感は、実はこちらがずっと圧倒的

PR商品

最新コメント

カテゴリー

提携

Amazon.jp