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(更新:2015年10月8日)

【時事】豚に真珠と批判は投げてやるな —シリア難民少女中傷イラスト事件—

聖なるものを犬にやるな。また真珠を豚に投げてやるな。恐らく彼らはそれらを足で踏みつけ、向きなおってあなたがたにかみついてくるであろう。

(『新約聖書』マタイによる福音書 第七章)

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先日から物議をかもしている「シリア難民少女中傷イラスト」だが、この記事を書いている現在(2015年10月7日)、作者のFacebookサイトからはどうやら、作品を無断利用された写真家からの抗議のおかげでようやく削除されたようだ。これに関しては当然ながら作者に対して様々な方面から批判、非難、抗議の声が殺到し、その大半は真摯かつ説得力のあるものであり、もちろん私なども大いに憤慨した一人である。しかし、これに対してたとえシリアをはじめ中東や欧米露の正しい社会情勢、人権、著作権、肖像権および社会倫理、表現の自由と責任、恥の概念等々から、いくら真面目に作者に対して道理を説き反省を求めたところで、まったくの徒労にしかならないだろう。どれだけその問題に対する精確なデータや信頼できる情報、客観的事実を取り揃えて目の前に提示し、懇切丁寧に噛んで含めて説明し言い聞かせたところで、あんなイラストもどきを描くような人間がそれらの概念を理解できる脳味噌を持っているはずがないからだ。彼らの頭に詰まっているのはもっぱら歪んだ被害者意識と幼稚な承認欲求以外には何も無く、そしてそれ以外のものを受け入れる寸毫の余地もないからである。

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おそらく、この作者は今でも、そしてこれからも、己の恥と愚かさ、無知無能を省みるどころか「自分がこれだけ話題になって注目されて、大手メディアから取材まで来た! 超ラッキー♡ やっぱりアレを描いといて良かったなあ(^^)。もっともっとああいうのを描けばみんなワタシに注目してくれるし褒めてくれる人もいっぱいいるし♪」ぐらいにしか考えられないだろう。たとえそれが傍目にはどんな汚名であっても、とにかく自分の名前と存在と所行が世間にあまねく知られ喧伝されさえすれば、路傍の石のごとく無視される無名無価値の存在であるよりははるかにましであるどころか、「『真実』を臆せず述べたばかりに『不当』な攻撃を受ける正義の戦士」ぐらいに脳内変換されているに違いないのだ。現実には、親や周りの大人の関心を惹きたくて悪戯を繰り返したり、周囲の子供に暴力や暴言を振るって回る放置児となんら変わることはないのだが。

己が危険を冒して自らの足で現地の難民キャンプに赴きその惨状を目の当たりにし、万感の思いとメッセージを込めて撮影し発表したはずの元の写真を無断使用・加工され、正反対どころか斜めはるか下の低劣なヘイト素材としてばらまかれた写真家本人がその当人に抗議し削除を、そして被写体になってくれた少女に対して謝罪を求めるのはまったく当然の行為であり権利であるが、他にきちんと生業なり、本物の使命や信念を持つ方々が、わざわざみずからの貴重な時間や労力を割いてまで誠実かつ真摯に対応、真っ向から批判してやるような存在価値などないのである。豚には適当に侮蔑と残飯を投げつけておいてやればいいのだ。いや、それは豚に対して失礼か。

彼らにとっては愛国も反韓反中も言うまでもなく、己の未熟なナルシシズムを糊塗し自己顕示欲を手っ取り早く満たすための錦の御旗でしかない。とにかく南北朝鮮でも中東の難民でも、多少ネガティヴなイメージでそれなりの瑕瑾がありそうな感じ(実際にどれだけの、どのような「悪事」を働いているかはこの際問題ではない)で、かつ己とは物理的な距離があって(さすがにこの手の連中が韓国やコリアンタウンのど真ん中に住んではいないだろうし、その経験も無いだろう)、実害を加えられる心配がなければ何でも、誰でもよいのだ。しかもこれらの対象には経済状況とか雇用問題とか治安とかなどの少なからぬ大義名分が付与されていて、もっともらしい理屈やデータらしきものをでっち上げて大きな声で触れ回っていれば、これまた少なからぬ同類や、中には権威や権力のありそうな面々までが同調して褒め称えてくれたりする。しがない無名の学生や家事手伝い、零細労働者、ニート、アーティストワナビー……等々が大した努力もなしに「憂国の志士、もしくは革命戦士」として持て囃され、そしてその愉悦に溺れてしまうのだ。(もっともこれらは、一部の反原発や反安保運動などにもそのまま当てはまってしまうのだが)

例の作者の場合、当人のサイトなどからの情報を見た限りでは精神疾患を持ち、そのせいかどうか定職に就けず、イラストやマンガで生計を立てられているわけでもないらしい。これらを信用するならば、税金も対して払っていないどころか医療費や生活費で身内あるいは自治体や国に対して相当の負担を掛けていると思われるし、正直なところ、国家にとっては一国民として全く貢献していないどころか不良債権と言っていい。少なくとも、空爆と虐殺の嵐から命がけで、あるいは貧困と飢餓に耐えかねて身一つで断腸の思いで生まれ育った故国を離れ、縁もゆかりも無く習慣も理解できず言葉も碌に通じず、当座の職どころか明日の衣食住の保証もない他国に逃れざるを得なかった難民や移民を一方的に断罪する資格はないと考える。もっとも、他に公表されているイラストやマンガにしたところで、同人レベルでも微妙な画力だし(聖○○○矢が流行っていた頃のセンス。古くさい)、いずれの作品?も極左セクトのアジビラと五十歩百歩のセンスと内容でいささかの工夫もオリジナリティも感じられず(これらを見ると、なんだかんだで小林よしのりの「評論マンガ」がまだ「プロ」の仕事だったことが分かる)、これでは確かに商業レベルで通用するどころか、アジテーションやプロパガンダという形式を借りて、粋狂な固定客でも狙わなければ碌に見られることもなく、まして今回のようにプロの写真家が撮った実在の少女を利用さえしなければ、世間に知られ広まることも有り得なかっただろう。

とにかく件の作者に対して要求すべきなのは、まずは「プロパガンダ」マンガやらイラストもどきの制作に費やしてる時間を多少なりとも自己省察に向けて、あらためてきちんとカウンセリングなり精神療法なり受けて自分の心身の疾患、欠陥、そして過去の生育環境やトラウマなどとじっくり向かい合い、そして癒し、その脆弱なプライドを立て直すこと、それ以外に無いだろう。かく言う私にしたところで、おそらく主観的状況も世間的評価も社会的価値も彼女とは対して変わらないのだが、それでも、己の惰弱や愚昧、非才を棚に上げ、分かり易い権威や権力に縋り、聞き心地の良い理屈を利用して、弱者やマイノリティに対して下らない嫉妬をして軽はずみに非をあげつらって攻撃したりはしないし、人間として最低限の想像力と羞恥心は備えているつもりである。

しかし、この彼女のおかげで「ああ、自分よりもっとダメな存在(女)がこの世に、それも日本にいてくれて良かったなあ(^^)。こんな人間でも平気で偉そうなことを言って生きていけるんだ!(だから、この私ももっと図々しくお気楽に自己主張して生きていっていいんだ!)」という感情を少なからず抱いたことも偽らざる事実である。そういう安心と安堵を与えてくれた、という意味においては、少なくともこの私にとっては彼女の存在はわずかなりとも有用だったのだ。ああ、「自分が一番底辺の屑じゃない」「自分よりも劣った(頭も心も)弱い人間が存在してくれる」「どんな扱いをしても構わない、心置きなく攻撃、侮蔑できる対象がいる」という事実は、下手な精神安定剤よりもかくも安楽に自分を癒し、そして心弾ませてくれるものなのか! ……やっぱり、しょせんは私も彼女のような人種と同類なのだろうな。

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くらえもん的ドラえもん解説・第27回『ぼくよりダメなやつがきた』|くらえもんの気ままに独り言 くらえもん的ドラえもん解説・第27回『ぼくよりダメなやつがきた』|くらえもんの気ままに独り言 このエントリーをはてなブックマークに追加

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